幼い頃、親に捨てられ、引き取られた祖父にも
虐待を受けて育ったジョン・ドーラン
ドラックに溺れ、まともな仕事に就くこともできず、
盗みに走っては刑務所暮らしの悪循環
さらにホームレスの仲間にも馴染めずにいた
居場所も無ければ頼る家族や友人もいないどん底の人生だった
ジョンは、ホームレスの簡易施設に入ることができた
ある日、同じ施設で暮らしていたベッキーが訪ねて来た
ベッキーはペット禁止の公営住宅に移ることになり、
飼っていた犬のジョージをジョンに押し付けた
ジョージは、3歳のスタッフォードシャー・ブル・テリア
ジョージはジョンの言うことを全く聞かなかった
留守番をさせると部屋中を
荒らしまわるので、仕方なく一緒に連れて出る
徐々にジョージに愛着がわいてきたジョンは、
薬物を断つために薬物中毒の更生プログラムを受け、
治療を受け始めた
路上で絵を売るストリート・アーティストを見かける
成績があまり優秀ではなかった少年時代、
唯一学校の教師から褒められたのが、絵を描くことだった
「えっ、おれも絵を描いてみろって?無理だよ いまさら」
それからジョンは来る日も来る日も絵を描き続けた
なけなしのお金でペンや紙を買い、
路上から見える景色をスケッチした
しかし素人の絵が簡単に売れるはずもなく
ジョンの絵は3か月が過ぎても1枚も売れなかった
それでも描き続けた
そんな1人と1匹の姿は、いつしか街で馴染みの光景となっていた
冬、コートを着たジョージは、
街の人気者となり写真を撮る人が次々訪れるように
ふとジョンは、ジョージのスケッチを始めた
それまで風景しか描いたことがなかった
ジョンにとって初めて描く動物の絵だった
「これ おいくら?」「買ってくれるんですか?」
ジョンが自分の腕で稼いだ最初の絵だった
それ以降、ジョージを描いたジョンの絵は、少しずつ売れ始めた
ホームレスが描く可愛い犬の絵の噂は、
瞬く間に広がり、ジョージの絵はさらに客を呼んだ
2012年「君がジョン・ドーランだね?」「ええ」「君に頼みがあるんだ」
声をかけてきたのは、アーティストのシチズン・ケーンだった
「今 ロンドンで活躍しているアーティストを集めて大きな展覧会をやろうと思っているんだが、そこに君も是非参加してもらえないかな?」
2013年9月、ジョンにとって初めての展覧会が開かれた
参加したのは著名なアーティストばかり
展覧会は大きな評判を呼び、客が押し寄せた
その中で一番の売り上げを記録したのは、ジョンだった
出品された彼の絵は全て完売
実に300万円以上の売り上げを記録した
それは新人として前例のない驚異の金額だった
その後、ジョンはパリやサンフランシスコでも個展を開催
これまでに4000点以上の作品を売り上げている
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